2013年8月19日月曜日

ザ・ロスチャイルドここだけの話(2)

上の2つの紋章は、ロスチャイルド家とナポレオン・ボナパルトのものです。 左の鷲が翼を広げているのがナポレオンのもの、右の5本の矢がロスチャイルドの家紋です。
周囲の文字はモットーを表し、ラテン語で(Concordia、Integritas、Industria)協調、完全、勤勉とあります。 なぜロスチャイルドの家紋が5本なのか?小説「ザ・ロスチャイルド」に由来のエピソードを織り込みました。読んでみてください。
もしかすると由来のエピソードを知って、「あれっ?戦国武将のあの親子の話に似ているな」と思われるかも知れません。 実は著者である私も、はじめてロスチャイルド家の5本の矢の逸話を知ったとき、そう感じました。

調べてみると、ヨーロッパ各地や中東、中国など世界中に類似の話が存在しています。 そして最後に行き当たるのが古代スキタイ国、紀元前6世紀から3世紀頃まで黒海南部から中央アジアにかけて繁栄していた騎馬民族国家です。
この頃の中国は春秋時代、孔子が活躍した時代です。ヨーロッパの地中海沿岸では古代ギリシアが繁栄していました。


有名な「スキタイの黄金」美術
エルミタージュ博物館所蔵

現代の技術では復元できない

スキタイと古代ギリシアの都市(ポリス)のいくつかは交流があり、スキタイの「矢の話」は古代ギリシア時代に生きた歴史家ヘロドトスの記述に残されています。
スキタイは地理的位置から中国とも交流があったと考えられますから、スキタイの故事が西と東の両方に広まり、2千年以上もの長い間、語り継がれたのだろうと思います。それだけ人の心に訴える話なのでしょう。

実はここだけの話、ロスチャイルド家の方々は、五本の矢のエピソードについて日本人から「オリジナルはどちらですか」とたずねられると、「きっと毛利家ですよ」と答えるのだとか。さすが、如才ないですね。見習うことにします。

次回は小説「ザ・ロスチャイルド」とワインの華麗なる話をお送りします。

ザ・ロスチャイルドここだけの話(1)

「ザ・ロスチャイルド」ここだけの話 1話

去る7月24日に、東京丸の内にあるKITTE内JPカンファレンスホールにて、小説『ザ・ロスチャイルド』出版記念講演会が開催されました。
当日、あいにくの雨空で足元が悪いなかをお越しくださった参加者の皆さま、運営に携わってくださった家計の総合相談センターの皆さま、ダイヤモンド社の皆さまに、心より御礼申し上げます。

おかげさまで沢山の方に来場いただいて、盛況のうちに終えることができました。
ただ、「平日の夜、東京の会場に行くのは難しい。残念である」というお言葉も何件か頂きました。 講演会では、ロスチャイルド家とナポレオン・ボナパルトについて、執筆の過程で知り得たこと、見聞きしたことを紹介しました。

料理あり、音楽あり、絵画あり、歴史あり。小説を読むのに、単に筋書きだけ分かればよいという考え方もあると思いますが、歴史を舞台にした物語の場合、その背景として描かれる事柄がわかると、いっそう楽しく読んでいただけると思います。
そこで、当日お話した内容のダイジェストを、何回かで紹介していきます。『ザ・ロスチャイルド』をすでに読まれた方も、まだ読んでいないという方も、ぜひお楽しみください。

さて、第4回城山経済小説大賞をいただいた『ザ・ロスチャイルド』は、18世紀後半から19世紀はじめ、動乱のヨーロッパを舞台に繰り広げられた、英雄ナポレオンと金融ロスチャイルド家の影の戦い、経済戦争を題材に描かれた物語です。
このロスチャイルド一族、ヨーロッパでは広くその名が轟いていますが、日本では名前を聞いてすぐにピンとくるのは、金融機関や商社、それに飲食関係に勤めている方くらいかも知れません。 彼らは世界的に名の知られるユダヤ人金融財閥一族です。