2013年3月16日土曜日

第三回 : 渋井式、海外での友人のつくり方 (2)

授業開始10分後には、スタッフの言葉を鵜呑みにした自分を呪いました。CBSラジオ二ユースの書き取りなんて難易度トリプルA級です。

現地のカナダ人たちが日常生活で聞くラジオ報道を完璧に聞きとって、その場でノートに書くなんて私には無理。
そんなレベルに達していたら、語学学校にそもそも通いません。

右隣の生徒のノートをそっと覗いてみると、出来ています。ペンを持った手がすごい速さで動いています。
左隣も、前も、左右斜め前も同じ。圧倒されてぼんやりしていると、

「Maho、まじめに授業に取組みなさい」
と、先生からの厳しい声が…。まじめにやっているけれど、分からない、出来ないんです。

ラジオから流れてくるアナウンサーの英語が早いし、おまけに専門用語が多くて分からない。90分後、ようやく休憩に入って、私は筆記道具をカバンにしまい始めました。

途中棄権は嫌ですが、ここまでレベルが高過ぎると仕方がありません。リスニングクラスはあきらめて、空きのある会話クラスに替えてもらおう。原則1週間は受講しなければならない規則だけど、どうにか頼むしかありません。

 

「何やっているの? まだ授業は終わっていないわよ」右隣の席のMがたずねてきました。
「このクラスは難し過ぎて、私はついていけない。だからもう退席する」

「くじけちゃ駄目よ」
大声を出して話に割り込んできたのは、左斜め前のEでした。

「誰だってはじめの頃は大変なのよ。でも踏ん張って取り組んでいけば、必ずできるようになるから」
「だけどさっきグループワークをやったとき、私が出来ないせいで時間内に課題が終わらなかったじゃない。みんなに迷惑をかけるのは嫌なの」

「迷惑なんて、そんなこと誰も思わないわよ」とE。
「人それぞれ出来る限りで、精一杯やればいいのよ」と、いつのまにか話に参加していたJが言います。